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9月の結婚式、着物はどうする? 単衣と袷のグレーゾーンの歩き方

その不安、よく分かります

9月の結婚式に招かれた。手持ちは袷の訪問着だけ。でも当日は真夏日の予報。

「暑いけれど、ルールは守らなきゃ」

そう思って調べ始めた方に、まずお伝えします。あなたの感覚は間違っていません。そして、逃げ道はちゃんとあります。

先日公開した「私たちは、江戸より厚着で9月を過ごしている」では、9月の衣替えカレンダーが出どころの分からない枠であることをお伝えしました。

ただ、あの記事が扱ったのは自分ひとりで決められる場面です。

結婚式やお茶会は、少し話が違います。今回はその「違い」を、正直にご説明します。

まず、基本のルール

一般的に、こう言われています。

・6月・9月の結婚式 ⇔ 単衣の訪問着

・7月・8月の結婚式 ⇔ 絽の訪問着(準礼装として着用可)

長沼静きもの学院さんも、季節の変わり目である6月・9月の結婚式では単衣を着用するのがルールだとしています。

これが「正解」です。知っておいて損はありません。

ただし7月・8月については、格としては絽で問題ない一方、記念撮影の観点から避けられることがあります。理由は後ほどご説明します。

でも、現場は少し違います

ここからが、多くのマナー記事が書かない部分です。

正解どおりにして、後悔した方がいらっしゃいます。

呉服店「きものと帯 丸や」さんは、ご自身の体験を率直に綴っておられます。9月の親族の結婚式で、皆が袷の黒留袖を着ている中、呉服屋として正式に則って単衣の訪問着で列席されたそうです。

しかし後日、親族の写真をご覧になってがっかりされたといいます。単衣なので重みがなく、貧弱に写っていた、と。

このご経験から、夏の結婚式では親族の場合のみ袷を着ると決められたそうです。

何が起きているのか

記念写真です。

京都の着物レンタル「夢館」さんも、同じ理由を挙げています。夏用の絽は透け感があるため、記念撮影で黒留袖なのに白んでグレーのように映ってしまう。親族のうち一人が絽で、もう一人が単衣や袷だと、写真写りにかなり差が出てしまうのだと。

つまり9月のフォーマルで効いているのは、暑さでも格でもありません。

並んで写ったときに揃っているか、なのです。

だから、立場で答えが変わります

ここが今日いちばんお伝えしたいことです。

親族として出る場合

集合写真に並びます。他の親族が袷なら、あなただけ単衣や絽だと浮きます。周囲に合わせると安心です。可能なら、事前に他の方の装いを確認してください。

ゲスト・友人として出る場合

集合写真の中心には並びません。丸やさんも、友人の場合は別だと明言されています。洋装の参列者も夏らしい薄着ですから、正式に則って単衣で問題ありません。

もちろん、袷でも構いません。手持ちが袷だけなら、そのまま着てください。ゲストの装いを一人ひとり検分する人はいませんし、9月に袷を着ている方は大勢いらっしゃいます。

同じ「9月の結婚式」でも、答えが逆になります。ルールが二つあるのではなく、見られ方が違うのです。

袷しかない、という方へ

大丈夫です。多くの方がそうです。

親族なら、むしろ袷が正解になる場面が多い。堂々と着てください。

そのうえで、暑さ対策を。

・長襦袢を絽や麻に替える ⇔ 見えない部分なので、格に影響しません

・肌着を吸汗速乾素材に ⇔ ここも見えません

・会場までは洋服で行き、着替える ⇔ 移動の汗を避けられます

・半衿を絽にする ⇔ 見える部分ですが、9月なら不自然ではありません

表に出ない部分は、いくらでも涼しくできます。

お茶会は、また別です

お茶席については、はっきり申し上げます。

流派やお席の趣旨、先生のお考えによって、判断が大きく変わります。

夢館さんも、お茶席での夏着物の利用については流派や先生の意向を確認するよう案内されています。

一般論で判断せず、お席の主催者かお稽古の先生に直接お尋ねください。それが最も確実で、失礼にもなりません。

「聞くのが恥ずかしい」と思われるかもしれませんが、逆です。事前に確認する方は、丁寧な方だと受け取られます。

迷ったときの順番

・まず ⇔ 自分は写真の中心に並ぶ立場か(親族かゲストか)

・親族なら ⇔ 他の方の装いを確認し、それに合わせる

・ゲストなら ⇔ 単衣でも袷でも、手持ちで大丈夫

・どちらでも ⇔ 見えない部分を涼しくする

この順で考えれば、大きく外しません。

前の記事との違い

私たちは、江戸より厚着で9月を過ごしている」では、9月のカレンダーを疑ってよいとお伝えしました。

今回は、少し違うことを申し上げています。矛盾しているように見えるかもしれません。

違いは、誰のために着ているかです。

・自分のための装い ⇔ その日の気温で決めていい。江戸の人もそうしていました

・人と並ぶための装い ⇔ 周囲との調和が優先されます

礼装は、あなたひとりのものではありません。誰かのお祝いの席で、その人の記念に残る一枚に、あなたも写ります。

そこで求められているのは、正しさより揃うことなのです。

最後に

暑さを我慢して体調を崩しては、元も子もありません。夢館さんも、せっかくのお祝いの席で暑さを我慢した結果体調を崩すことは避けたいと書かれています。

見える部分は周囲に合わせる。見えない部分は徹底的に涼しくする。

この使い分けができれば、9月の礼装は怖くありません。

あなたが心配しているということ自体が、その場を大切に思っている証拠です。その気持ちがあれば、大丈夫ですよ。


文:キモノプラス編集部 藤沢 琴音

出典・参照

・長沼静きもの学院「結婚式にきものを着ていく!季節に合わせたきもの選び」/6月・9月の基本ルールについて参照

・きものと帯 丸や「【ご相談】夏(6月・7月・8月・9月)の結婚式の着物について」/親族としての体験談について参照

・夢館「夏用留袖とは」「夏の着物はどんな種類がある?」/記念写真での写り方、お茶席での確認の必要性について参照

・京都かしきもの「暑い夏の結婚式で着物を着るには?」/絽の訪問着の準礼装としての扱いについて参照

関連記事:私たちは、江戸より厚着で9月を過ごしている