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雨の日こそ、着物がいい。梅雨のお出かけを味方につける、実践者たちの声

みなさん、「今日は雨だから、着物はやめておこう」と、たんすの前でため息をついたことはありませんか。梅雨どきの着物は、たしかに気をつかいます。でも、実際に雨の日を着物で楽しんでいる人たちの声を集めてみると、面白いことに気づきます。彼女たちは雨を「乗り越えるもの」ではなく、「味方につけるもの」として捉えているのです。

このコラムでは、個人ブログや着付け講師の方が綴った「雨の日着物」の生の声を、キモノプラス編集部の視点で編集してお届けします。読み終わるころには、次の雨予報が、少し楽しみになっているかもしれません。

「着物雨女」の開き直りが、いちばん強い

着物ライターの星わにこさんは、自分のことを「着物雨女」と呼びます。着物ででかけると張り切っているときに限って、なぜか雨が降る——キモトモ(着物友達)からは「くれぐれも張り切らないで」と釘をさされるほどだそうです。

最初は雨だと洋服に変えたり洗える着物にしたりしていたそうですが、考え抜いたコーディネートを変更するのはがっかりすると気づき、雨対策グッズを揃えていったといいます。屋内で過ごすシーンなら、正絹でも対策をして出かけるようになったそうです。

編集部の一言:この「がっかりするから、対策する」という順番が本質だと思います。我慢して洋服にするのではなく、着たいものを着るために工夫する。前向きな開き直りこそ、雨の日着物の第一歩です。

出典:正絹着物でもできる雨の日対策「星わにこ連載コラム」by いち利モール さん

プロは「潔く濡れてOK」の素材を選んでいる

多奈ゑりきもの教室の、たなえり先生。レッスンの日は雨が降っていようと雪が降っていようと必ず着物を着るという実践者です。その素材選びが、とても具体的で参考になります。

正絹のときは雨コート必須。一方で、暑い時期の雨は雨コートを着たくないので、潔く濡れてもいい素材の着物を選ぶそうです。木綿もいいけれど、大雨が予想される日には、乾きの早いセオαや麻の着物がおすすめとのこと。さらに、着物は濡れても大丈夫でも正絹の帯を締めているときは、二部式雨コートの上だけや薄羽織で帯だけを守るという技も紹介しています。

編集部の一言:「濡らさない」だけでなく「濡れてもいい状態をつくる」。この発想の転換は、プロならではです。守るべきもの(帯)と、気楽でいいもの(木綿・麻)を切り分ける目線が、肩の力を抜いてくれます。

出典:<教えて!たなえり先生>#53-雨の日のコーデ – WITH THE MODERN さん

雨は「敵」じゃない。恵みの雨を、帯にのせる

老舗の織元・桝屋髙尾さんは、雨の日のコーディネートに、こんな物語を込めています。憂鬱なことが多い雨の日だけれど、植物にとっては恵みの雨。その瑞々しさをイメージして、植物の細胞をモチーフにした帯を合わせる。あるいは「水」をテーマに、ガラスを流れる水のように見える模様や、地紋の流水を選ぶ——雨の日だからこそ映える装いを、積極的に楽しんでいます。

編集部の一言:雨を「困りごと」から「テーマ」へ。この視点の切り替えがあると、コーディネートは急に楽しくなります。水、雨粒、流水。梅雨の空気に呼応する柄を選ぶこと自体が、季節を着るという着物の醍醐味です。

出典:【雨対策】雨の日も着物でお出かけを楽しむアイディア – 株式会社桝屋髙尾 さん

紫陽花に心を動かされて、着物を選ぶ

noteに綴られた森山智子さんの一篇が、とても素敵です。散歩道で出会った額紫陽花が、雨上がりに紫からピンクへと色を変えていた。その静かな風情に心を動かされ、こんなスモーキーな感じで着物が着たいと思ったそうです。そして「夏の額紫陽花、好きになりました。たぶん雨がいいのだと思います」と結ばれています。

編集部の一言:雨の日の着物は、対策の話だけではありません。雨がつくる色、湿った空気の風情に感応して、装いを決める。その感受性こそが、梅雨を豊かにしてくれます。花に呼ばれるように着物を選ぶ——こんな贅沢な動機があってもいいのです。

出典:夏の額紫陽花と着物|森山 智子 さん(note)

雨に映える色を、あえて選ぶ

日々の着物コーデを記録している「着物たまおかぁちゃん」さんは、紫陽花の季節にブルー系の単色コーディネートを楽しんでいます。古い絞りの帯揚げをプラスしてボリュームを出し、かんざしもブルー系でまとめる。雨の景色に溶け込むような、涼やかな色合わせです。

雨の日はグレーや紺で沈みがちですが、青磁色や薄紅色といった自然を感じさせる中間色を選ぶと、雨の中でも清潔感と品が出るという声もあります。トーンは柔らかく、彩度は少し明るく。これが、しっとりした空気に映えるコツのようです。

編集部の一言:雨だから暗い色、ではなく、雨だからこそ映える色。この発想があると、梅雨のコーディネートはぐっと洗練されます。

出典:紫陽花に雨 | 着物たまおかぁちゃん さん


では、どこへ行く? 雨の日こそ映える「場所のタイプ」

雨の日の着物が楽しみになってきたら、次は行き先です。ポイントは、「雨だと困る場所」ではなく「雨だからこそ映える場所」を選ぶこと。エリアを問わず使える、4つのタイプをご紹介します。

タイプ1:室内から庭を眺める寺社

雨の日にいちばん心強いのが、建物の中から庭園を鑑賞できるお寺です。濡れずに座って、雨にけぶる庭を眺める。この贅沢は、晴れの日には味わえません。お堂の中から写真が撮れる場所なら、傘が邪魔にならず、雨に濡れる心配もありません。雨をしっとり含んだ石庭や、水を得て艶やかに光る苔は、この季節ならではの絶景です。

タイプ2:苔と青もみじが輝く庭

苔の美しい庭園は、雨の日こそ本領を発揮します。雨の日は苔が水を含んで一層鮮やかに輝き、本堂の柱を額縁に見立てて眺めると、一枚の絵画のような景色が広がります。苔や雨上がりの緑は、雨の日や雨上がりにこそ、より一層その色が濃くなるのです。静かに雨音を聞きながら過ごす時間は、梅雨の特権です。

タイプ3:天候に左右されない屋内施設

「とにかく濡れたくない」なら、美術館・博物館・水族館が安心です。天候の心配をしたくない方には水族館もおすすめで、クラゲの水槽を背にした写真は幻想的な一枚になります。着物で非日常の空間を歩けば、それだけで特別なお出かけになります。空調が効いている点も、蒸し暑い梅雨には嬉しいところです。

タイプ4:庭を望む和カフェ・室内スポット

歩き回らず、一か所でゆっくり過ごすのも雨の日の楽しみ方です。庭を眺められる和カフェや、写経・写仏を体験できるお堂など、腰を落ち着けられる場所を選べば、雨は気になりません。むしろ、しとしと降る雨は、静かな時間の心地よいBGMになってくれます。

雨の日を、味方に

雨の日の着物は、我慢でも根性でもありません。実践者たちが教えてくれるのは、「濡れてもいい素材を選ぶ」「守るべきものだけ守る」「雨に映える色や柄を楽しむ」「雨だからこそ美しい場所へ行く」という、しなやかな工夫の数々でした。

次の雨予報を見たら、がっかりする前に、たんすを開けてみてください。梅雨は、着物でいちばん静かで美しい季節かもしれません。

キモノプラス編集部