花火大会、浴衣を”着なかった”理由を分析してみた
花火大会、浴衣を”着なかった”理由を分析してみた
「浴衣を着ようよ」の大合唱の裏側には、実にさまざまな”着ない事情”があります。今回はその声を一つの物語にせず、身体・生活・年齢・心・モノとの関係という5つのレイヤーに分けて読み解いてみました。どれも「着物離れ」の一言では片づけられない、リアルな生活者の論理です。
視点①:身体的な負担 ― 暑さ・着崩れ・下駄という物理的コスト
花火大会は屋外に長時間立ちっぱなしになるイベントです。Yahoo!知恵袋には、暑さや動きづらさ、着崩れの不安から浴衣を着たくないという女性の相談が寄せられ、彼氏に「どっちでもいいよ」と気を遣われても迷いが晴れない様子が書き込まれています。生活情報サイトの読者投稿欄でも、浴衣が単純に「暑すぎた」という声や、会場の混雑で始まる前から疲れてしまったという体験談が集まっていました。
出典:Yahoo!知恵袋「今度彼氏と花火大会に行くのですが」さん/リビング東京Web「花火大会あるある」読者投稿さん
もう少し楽になるとしたら:足元だけ下駄風のサンダルに替える、帯の内側に保冷剤を忍ばせるなど、見えない部分だけ涼しさを味方につける工夫は効きそうです。会場までは私服で行き、現地で着替えるという”後乗せ”のスタイルも、この視点にはよく合います。

視点②:ライフステージによる制約 ― 子育て・介護・ペット
ワコールの読者コミュニティ「ブラパン」が実施したアンケートには、小さな子どもがいるので着る余裕がない、母の介護があるので今年はテレビで花火を見る、犬を飼い始めてクリーニングの手間を考えて我慢する、といった声が並びます。「着たい気持ちはあるけれど、今の生活フェーズでは難しい」という、着る/着ないの二択ではない中間の本音が見えてきます。
出典:ブラパン|ワコール「今年の夏は、浴衣を着る?」アンケートさん
もう少し楽になるとしたら:二部式の浴衣や兵児帯を選べば、着付けにかかる負担そのものが軽くなります。「今年は難しいから、来年着たい一着だけ先に決めておく」くらいの構えでちょうどいいのだと思います。
視点③:年齢を重ねてからの気後れ ― 「痛い」と思われたくない
個人ブログ「立ち上がれ、着物女子」の書き手は、アラサーを過ぎると安易なプリント浴衣を選ぶと「残念な仕上がり」になりかねないと感じるようになり、長年憧れていた浴衣を着るまでに何年もかかったと振り返っています。年齢とともに「若い頃のようには気軽に着られない」という気後れが、着る/着ないの分かれ目になっていたという告白です。
出典:立ち上がれ、着物女子「《衝撃》その浴衣姿、痛くないか?」さん
もう少し楽になるとしたら:柄選びを少し大人びた方向に振るだけで、印象は大きく変わります。「浴衣」ではなく「夏着物」として選び直してみると、気後れの正体自体が薄れていくのではないでしょうか。

視点④:先延ばしという前向きな保留
投稿プラットフォーム「NOTE15」には、「今年は浴衣着ないで終わったなぁ、、笑 てか、コロナ禍一回も着てない笑」と綴った、悔いのない軽やかな呟きがあります。着なかったことを後悔として語るのではなく、「また今度でいい」という肩の力の抜けた態度が印象的です。
出典:NOTE15「浴衣」のポエム集さん
もう少し楽になるとしたら:ここは無理に手を入れるところではないはずです。「また今度でいい」という軽やかさこそ、そのまま肯定したい視点です。
視点⑤:買ったのに着られない罪悪感
シンプルライフを綴る個人ブログ「シンプルライフ×シンプルスタイル」の書き手は、10年近く前に買った浴衣を一度も着られないままクローゼットにしまい続けていることを綴っています。似合わなくなっていないか羽織って確認したり、手放すべきか悩んだりしながらも、日本文化を大切にしたい気持ちがある限りは手放さないと決めた、という葛藤の記録です。
出典:シンプルライフ×シンプルスタイル「断捨離できないもの|あれから4年。捨てれなかった浴衣の現状報告。」さん

もう少し楽になるとしたら:花火大会という大舞台でなくても、近所の夕涼みや家の中で一度羽織ってみる。それだけで十分な気がします。似合わなくなっていたら、帯や小物に仕立て直して形を変える道もあります。
まとめ
5つの視点を並べると見えてくるのは、「浴衣を着ない」という選択の裏に、怠慢でも着物離れでもなく、身体・生活・年齢・気持ち・モノとの関係という、それぞれに健全な理由があるということです。共通しているのは、誰も「着物が嫌い」とは言っていないこと。むしろ「本当は着たい」という気持ちが根底にあるからこそ、着られない状況にもどかしさや罪悪感が生まれています。
キモノプラスは、「今年も着なかった」を着物離れの証拠として数えません。着なかった理由の数だけ、次に着るときのヒントがあると考えます。この記事で挙げた5つの視点は、そのまま「着るためのハードルを一つずつ外していく」ためのチェックリストでもあります。
キモノプラス編集部









