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[着物でお出かけ] 令和に割れた「殺生石」の謎。矢来能楽堂で物語と現実が交差する

先日、神楽坂にある矢来能楽堂へ。

登録有形文化財に指定された趣ある能楽堂は、演者との距離が近く、足拍子の響きがダイレクトに届き、五感を刺激する濃密な空間です。

今回は妖怪と精霊を題材にした舞台。
私は昼の部に参加したので、「狂言:蚊相撲」「能:殺生石」を鑑賞しました。

「狂言:蚊相撲」は、新しく雇った家来が実は「蚊の精」だったというお話。
特技の相撲で大名を打ち負かしますが、最後は正体を見破られ、「ブーン、ブーン」と蚊になりきりコミカルに退散していく様子に、思わず声を出して笑ってしまいました。

一転して「能:殺生石」は、生きた者の命を奪う石に宿った「九尾の狐」の霊が、高僧の祈りによって成仏する物語。

この舞台の解説で、栃木県那須岳にある本物の「殺生石」が、令和4年3月に真っ二つに割れたという事実を知り、一気に目が覚めました。
鳥羽上皇の時代から900年を経て、狐の霊がようやく成仏できたのではないか……。そんな不思議な感覚に包まれました。

物語と現実が入り混じり、嘘か本当か分からなくなる境界線の曖昧さ。 それが、何千年も受け継がれてきた日本文化の底知れない面白さだと感じた春の午後でした。