成人式で終わってしまう着物に、私たちは本当に満足しているだろうか
――「一点消費」モデルの先にある、業界の未来の話
こんにちは。キモノプラス編集長の久野雄治です。
私はIT/AIの世界で、データとテクノロジーを使って「産業の構造」を変える仕事をしています。同時に、着物という文化に心から惚れ込み、業界の中に身を置く一人でもあります。
今日は、あえて少し踏み込んだ話をしようかと思います。
「成人式で終わってしまう着物ビジネスで、本当にいいのか?」という問いについてです。
成人式“一点消費”モデルへの違和感
成人式は、着物業界にとって今も最大級のイベントです。
需要が集中し、売上も立つ。これは事実です。
ただ、冷静に考えてみると、
・一生に一度
・一回着て終わり
・その後、着物との関係が途切れる
この構造は、かなり歪なビジネスモデルでもあります。
IT業界の視点で言えば、
「新規顧客獲得コスト(広告・展示会・人件費)を、1回の取引で回収しきろうとするモデル」です。
正直、効率は良くありません。
それ以上に、私は文化的なもったいなさを感じています。
せっかく着物の美しさを体験した若者が、その後10年、20年と着物から離れてしまう。
これは、業界全体で“自ら接点を切っている”状態とも言えます。
次の接点はどこにあるのか?
――「普段着・SNS・体験」という3つのヒント
では、成人式の“次”はどこにあるのか。
私は大きく3つの接点があると考えています。
① 普段着としての着物
毎日でなくていい。
「月に一度、着る理由」があればいい。
IT業界で言うなら、これはサブスクリプション的発想です。
一度きりの高額商品ではなく、
・着る機会
・メンテナンス
・コーディネート提案
を含めた“関係性の継続”が価値になる。
② SNSという“現代の口コミ”
若い世代は、広告よりも共感で動きます。
着物を「売る」のではなく、
着物を楽しむ人の物語を見せる。
これは難しいDXではありません。
スマホ一台でできる、立派な「接点づくり」です。
③ 体験としての着物
着付け教室、街歩き、写真撮影、職人との対話。
モノではなく、体験としての着物。
飲食業界や観光業界では、
「体験価値」が客単価とリピート率を押し上げてきました。
着物業界でも、同じことが起きない理由はありません。
テクノロジーは冷たい。でも、使い方次第で文化は温かくなる
DXやAIという言葉を聞くと、
「着物と相性が悪い」と感じる方もいるでしょう。
でも私は逆だと思っています。
勘と経験に頼りすぎてきた業界だからこそ、
データとテクノロジーが“人の想い”を支える。
成人式後、どんな人が次に何に興味を持つのか
どんな体験が、次の一回につながるのか
これらは、感覚ではなく見える化できる時代です。
キモノプラスとして、私がやりたいこと
私は、正解を持って現場に入る人間ではありません。
着物が好きで、この業界が好きで、
それでも「このままでいいのだろうか」と
何度も考えてきている人間の一人です。
成人式で、あれだけ美しい姿を見せてくれた着物が、
その日限りで箪笥にしまわれてしまう。
その現実に、ずっと違和感がありました。
成人式を、終わりにしたくない。
でも、立派な理想を掲げたいわけでもない。
ただ、「また着たい」と思える瞬間を、
業界として用意できないだろうか。
私はその問いを、皆さんと一緒に考えたいのです。
もし、「うちの店でも何かできるかもしれない」
そう感じていただけたなら、ぜひ声をかけてください。
伝統を守るためにこそ、革新が必要です。
私は、本気でそう信じています。

キモノプラス編集長:久野 雄治